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チメロサール(水銀系保存剤)に関して

チメロサールとは

チメロサールの構造式 分子構造式

チメロサール

化学構造式 NaOCOC6H4SHgC2H5/(C9H9HgNaO2S)

分子量 404.81 (水銀含有量:重量パーセント 49.55%)

体内代謝
チメロサールは、人体に吸収された後、”エチル水銀” と”チオサリチル酸”に分解されます。

チメロサールの使用目的

 液状のワクチン製剤では、溶液中の雑菌繁殖を防止するため、強い殺菌効果のある保存剤が添加されます。この保存剤として、チメロサールが使用されている場合があります。

 凍結乾燥製剤や凍結保存製剤では、保存剤(殺菌剤)を添加する必要はなく、チメロサールを含みません。

エチル水銀の薬理的影響

水俣病(みなまたびょう)で有名なメチル水銀は、生体に対する障害に関して多くの文献があります。

しかしエチル水銀の微量摂取に関しては、信頼できる文献を確認できません。

中枢神経障害・自閉症・ADHD(注意欠陥多動性障害)との関連を指摘する文献もありますが、アメリカ合衆国における ”自閉症の増加” と ”チメロサール含有製剤の使用時期” が一致した事実を指摘する曖昧な表現にすぎません。 実際に、アメリカ合衆国では、チメロサールを含まないワクチン製剤へ切替がすすんだ後も、自閉症の発症頻度に 優位な変化を認めませんでした。

(2004.10)

チメロサールに対する当院の評価

水銀摂取量の世界基準の中で、一番厳しいものは EPA(Environmental Protection Agency:USA)の”0.7μg/Kg・週”です。6Kgの乳児水銀接種許容量は、4.2μg/週となります。

旧・厚生省(現・厚生労働省)が昭和48年に設定したメチル水銀の 暫定的耐容週間摂取量は、”3.4μg/kg・週”です。6Kgの乳児水銀接種許容量は、20.4μg/週となります。 予防接種は、一般的に1週間以上間隔をあけますので、日本で承認されているワクチン製剤は、全てEPAの基準をクリアしています。

当院では、チメロサールを含まない製剤も用意しており、チメロサールフリー製剤に対応いたしますが、これは安心感を拠所(よりどころ)とした選択です。

チメロサール含有ワクチンの安全性を否定するものではありません。

アメリカでチメロサールが問題になった理由は?

 アメリカの予防接種は、生後2-4ヶ月の乳児期に始まります。B型肝炎・DTaP(日本ではDTP)・Hib・不活化ポリオ(IPV)など、複数のワクチンを同時接種されます。

乳児体重:5-8Kg/生後2~4ヶ月の乳児

水銀注射量 2.5μg × 4本 = 10μg

 アメリカでは、複数ワクチンを 同日接種することにより、許容量を超える水銀が乳児に注射されていた時期があります。現在では、日本・アメリカいずれも水銀を使用していないワクチンが普及してきています。

付記

★ チメロサールは、液状製剤の保存剤として使用されますので、凍結乾燥したワクチン(麻疹and/or風疹・水痘・おたふく・日本脳炎・狂犬病・髄膜炎菌など)には含まれておりません。

★ 暫定的耐容週間摂取量(PTW I : Provisional  Tolerable Weekly Intake)とは、人が一生涯にわたり摂取しても健康に有害な影響が現れないと判断される暫定量です。体重1kg/1週間当たり に換算された数値です。

 旧厚生省が昭和48年に設定したメチル水銀の 暫定的耐容週間摂取量は、”3.4μg/kg・週”です。

★ 魚介類中の水銀濃度は、0.01~0.24ppmと報告されています。

たとえば、週あたり200gの食用魚を食べたと仮定した場合、水銀量2~48μgを食物として、毎週取り込むことになります。

平均的妊娠期間:44週(約10ヶ月)で 2,000μgを超える水銀を 食品と一緒に食べる可能性があるわけです。私たちの通常の食生活において、ワクチン製剤より 遥かに多量の水銀を、食事として食べているという現実があります。