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授乳中にのめる薬

新生児のお母さんでも、カゼをひきます。おなかが痛くなったり、咳が止まらなかったりと、病気は予測できません。新生児・乳児期はデリケートな時期ですから、母体への薬剤投与は慎重であるべきです。では、どんな薬なら安全なのでしょうか?
”ことなかれ主義”・・・的な不作為が、治療機会を奪ったり、不用な断乳を招く場合もあります。授乳中であっても、内服に支障のない薬は たくさんあります。授乳中の処方薬に関して、コラムを設けました。

乳腺の働きと母乳分泌

乳腺組織から、母乳は分泌されます。乳腺中をながれる血漿の中から、たんぱく質や脂質を選択的に乳腺細胞が取込んで、母乳を合成しています。
この過程は、血漿を単純に濃縮して、母乳を造っているわけではありません。例えば、コーンスープを濃縮してルーを作るわけではなく、コーンだけを拾い集めているようなシステムです。乳汁中に移行する薬剤は、わずかな量です。

血液から母乳への薬剤移行

母乳への薬剤移行に関して、おおまかに考えてみます。

体重50Kgのお母さんの場合、体重に対する乳腺の重量は、 約0.5% です。乳腺への血流が組織の重量に比例すれば、乳腺の血流量は 全身の血流量の 約 0.5%程度となります。授乳中の乳腺は血流が増加していますので、少し多めに見積もって、循環血液量の 0.5~2%程度が乳腺組織の血流量と考えられます。
薬剤は血液によって全身の組織に供給されます。薬剤の組織浸透が受動的ならば、各組織の血流量が薬剤移行量に比例します。
前述のしたとおり、乳腺の血流量が、全身の循環血液量の 0.5~2%程度と仮定すれば、乳腺組織に移行する薬剤量は、吸収量の 0.5~2%程度と考えられます。薬剤動態に特異性が無ければ、乳汁に分泌される薬剤料は、母体投与量の 2%を超えません。
実際に母乳の薬剤濃度を計測してみても、通常内服薬の母乳移行率は、100~200分の1(1~0.5%)と極めて微量です。この移行量が新生児・乳児への影響する可能性は、極めて少ないと考えます。乳腺で濃縮されたり、乳児体内で蓄積されるような薬剤など、特殊な薬でない限り、薬剤内服中であっても授乳は可能です。
母乳への移行量が、投与量の1~0.5%であれば、薬効の観点から考えてみても、新生児・乳児にの有効量に達しないため、お子様への影響は ほとんどありません。

授乳は、とても大切です

粉ミルクと比較した場合、栄養価や免疫能力など多くの面で、母乳が絶対的に優位であることは確実です。授乳行為は、母性を育てる意味でも、赤ちゃんとの絆をはぐくむ意味でも、親子ともに重要な営みです。
逆に、断乳するメリットはほとんどありません。不用意な断乳は、乳汁分泌量の低下や乳腺炎などトラブルの誘因になります。

どの薬が、安全なのでしょうか?

医師が処方する”ほとんどの薬”は、添付文書(仕様書)に注意事項として”授乳”や”妊娠”に関して慎重投与が記載されています。
しかし、授乳時の慎重投与とは、薬品販売に伴う責任回避の方便でしかありません。授乳中であるからといって、病気にならないとはかぎりません。一律的に処方や授乳を中止することは過剰な対応と考えられます。
授乳中であるために、治療を受けられなかったり、母親の判断で内服を怠ったり、さらには授乳を中止しながら内服を継続したりと、きわめてストイックな対応が多い気がします。
たとえば、インフルエンザ薬・タミフルを内服していても授乳は可能です。インフルエンザの高熱に耐えながら無治療で赤ちゃんに授乳する場合と、きちんと治療を行いながら授乳する場合、どちらの方が赤ちゃんにリスクが少ないか考えてみてください。母親がタミフルを内服した方が、母子ともにリスクが低いはずです。

下記は、国立成育医療センター・ウエッブサイトの授乳時の内服薬に関するページです。

国立成育医療センター ママのためのお薬情報(http://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/index.html)

特に ”授乳と薬についての表” には、授乳中に使用しても問題ないとされる薬剤の代表例が記載されています。
授乳中に ”飲んでいけない薬”は、簡単に検索できますが、”飲める薬”を探すのは難しいと思います。その意味で、前記サイトは有用な情報がまとまっています。
ただし、掲載薬剤数が多いので、ある程度の根気が必要です。

授乳中に使用して問題ないとされる当院採用薬の一部

上記は、授乳中に使用して問題ない当院採用薬の一部をピックアップしております。
記載薬剤以外にも、授乳中であっても内服可能な薬剤はあります。治療を担当される主治医の先生としっかり相談してください。

【ご注意】

現在内服中の薬剤や、授乳時の治療に関する問い合わせには、当院では対応できません。担当の医療機関にて ご確認ください。
メール・お電話による問い合わせは、対応が困難です。ご協力をお願いいたします。

ふたばクリニック 広瀬久人 (2009.12.15)