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海外のA型肝炎の実情・2018

2018年、アメリカではA型肝炎の報告が急増しています。(2019report)
集団感染の原因食材は、冷凍食品です。
冷凍食品は、工場で大量生産・大量消費されるため、罹患者数が多く、発症分布が広い範囲に及びます。
実は、冷凍食品・・・とくにカットフルーツやベリーの冷凍食品によるA型肝炎集団発生が、各国から報告されています。
アメリカを中心に、A型肝炎を検討していきます。

A型肝炎ウイルス・病態

A型肝炎ウイルスは、RNAウイルスで、ピコルナウイルス科に属します。

A型肝炎ウイルスの宿主は、ヒトがほぼ唯一の宿主です。(注1)
汚染された食べ物を経口摂食することによっておこる、ウイルス感染症です。
感染成立後、2週間から約2ヶ月の潜伏期を経過して、微熱・倦怠感で発症します。
肝機能の障害を認めるため、食思不振、便の白色化、黄疸を合併することもあります。

注1:ヒトおよび類人猿はA型肝炎に感受性があります。ゴリラ、オラウータン、チンパンジーも実験的には感染可能です。しかし、類人猿への、A型肝炎ウイルス暴露の可能性は極めて限定的です。野生における自然感染の可能性は、ほとんどありません。

伝染・感染

A型肝炎ウイルスは、感染者の便に含まれて、排泄されます。
人糞中に排泄されたウイルスが、めぐりめぐって経口感染を起こしてきます。

国によって下水処理システムは異なりますが、ウイルスを含む便は浄水場で処理されるか、直接河川・海岸に流入します。その間に、プランクトンが人糞を処理し、プランクトンを底辺とした食物連鎖がはじまります。
プランクトンを、甲殻類や貝類が食べて、さらに・・・という連鎖の中で、生物学的濃縮(A型肝炎ウイルスの濃縮)が起こります。
A型肝炎ウイルスは、人間には病原性がありますが、甲殻類・貝類・魚類・爬虫類・両生類には病原性はありません。霊長類を除く哺乳類にも病原性を持ちません。
A型肝炎ウイルスを保菌するアサリやエビは、健康で元気です。
A型肝炎ウイルスに汚染されても、アサリは肝炎を発症することなく、保菌を続けます。
汚染された海産物などを、不充分な加熱で摂食すると、ヒトだけが感染する、ヒトに不利な感染症です。 

2018年 CDCが報告したアウトブレーク(A型肝炎)

アメリカでは、A型肝炎のアウトブレークが起こっていますが、原因はすべて冷凍食品です。。

List of Selected Outbreak Investigations, by Pathogen
https://www.cdc.gov/foodsafety/outbreaks/multistate-outbreaks/outbreaks-list.html

Frozen Strawberries – Hepatitis A:2016
Frozen Scallops – Hepatitis A:2016
Pomegranate Seeds – Hepatitis A:2013

下記は、アメリカにおけるA型肝炎報告数の推移です。(2011-2018, CDC)


2013年、2016年にA型肝炎のアウトブレークがありましたが、アウトブレークとは相関しないA型肝炎報告が急増しています。

前述の通り、アウトブレーク報告のあったA型肝炎事例3件は、すべて冷凍食品です。
冷凍のイチゴとザクロは、加熱しないで生のまま食べます。
冷凍フルーツがウイルスに汚染されていたら、感染は避けられません。
ホタテは加熱調理しますが、調理中にキッチンを汚染してしまったり、加熱が不完全な場合は、感染源となります。

2013年、2016年に報告者数が増加していますので、アウトブレークの影響と考えることができます。
しかし、2017年以後急増している疫学的な理由が不明です。

冷凍食品で、A型肝炎ウイルス汚染が確認されたロットでは、FDAが警告を公表し、全量廃棄処分になっています。
こうした、冷凍食品の水際対策が反映されない報告数の増加は、社会免疫の低下によるものかもしれません。
アメリカでは、A型肝炎ワクチンが定期接種されていますが、感染防御に関して限界があるのかもしれません。

冷凍食品の汚染源究明

冷凍食品の感染経路究明は、滞りがちです。

生鮮食料品を冷凍加工する過程を考えてみます。
原材料は多量の水で洗浄され、パックに詰められ、冷凍します。
この過程で、汚染が起こるとすると、以下のような原因が想定されます。

  1. 栽培時、灌漑水の汚染
  2. 洗浄水の汚染
  3. 商品に接触するスタッフから汚染

消費者がA型肝炎を発症するタイミングは、製造日より数ヶ月経過しているので、調査に限界があります。
アメリカ国内で流通している冷凍食品の多くは、海外で製造されています。
海外の供給元に対する川上調査は、現実的ではなく、汚染源の特定は困難です。

日本におけるA型肝炎抗体保有率

少し古いデータですが、日本の調査レポートがあります。
国内調査(2003)で、A型肝炎抗体・自然獲得率は、70歳以上では70%以上、40歳以下では ほぼ0%でした。(注2)
日本では、A型肝炎ワクチンは定期予防接種に含まれていません。
アメリカのような冷凍食品によるアウトブレークが起こった場合、かなりの規模での感染拡大が予想されます。

注2
IASR :わが国におけるA型肝炎の血清疫学
(Vol. 31 p. 286-287: 2010年10月号)
https://idsc.niid.go.jp/iasr/31/368/dj3681.html


A型肝炎予防接種

海外渡航時の予防接種として、A型肝炎ワクチンは基本的な予防接種です。
海外旅行中は、自炊は難しく、提供されたメニューを食べざるをえません。
食べ物を介して感染する伝染病は、旅行者に回避する方法はありません。
A型肝炎は、ワクチン製剤が用意されています。
旅行計画の中に、是非予防接種も含めてご検討ください。

2020.05.28 広瀬久人

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