コラム

接触性皮膚炎/花木:ウルシ科

ウルシ科・ウルシ(Poison oak)

病態:アレルギー性皮膚炎

病因:ウルシオール(urushiol)、ラッコール(Laccol:注1)、チチオール (thitsiol)

ウルシは、塗料・接着剤として利用され、塗物として有名です。
日本国内で利用する塗料用漆は、ウルシ科/ウルシノキという種を利用しています。
ウルシノキは、サップ(樹液)が豊富で、商業的価値が高い経済植物です。
海外を含め、商業利用されているウルシは、”ウルシノキ”と”BlackTree”の2種です。
商業利用されている2種以外にも、ウルシ科の植物はたくさんあり、それぞれサップに天然樹脂成分(ウルシオール、ラッコール、チチオール)を含みます。

私たちが、一般的な山歩きで遭遇するのはヤマウルシやツタウルシです。
ヤマウルシもウルシ科であり、サップに樹脂成分を含みますが、採取量が少なく商業的に利用されません。

ウルシ科の樹脂成分は、空気中の酸素を利用して架橋反応を起こし、強固な樹脂を形成します。
この架橋反応は、アレルゲン&ハプテンの作用もあり、強いアレルギー反応を起こしてきます。

樹脂成分は、花・果実・葉より、幹とくにサップ(樹液)に多く含まれています。
架橋前の樹脂成分には揮発性があり、直接接触が無くても、接近しただけでアレルギー反応を起こすこともあります。
ツタウルシの近くを歩いただけで、過敏症のある人は皮膚炎をおこします。

他のウルシ科植物

ウルシ科には、食材として利用される種もあります。

ウルシ科の食材の例

  • マンゴー(mango)
  • ビスタチオ(Pistachio)
  • カシューナッツ(cashew)
  • コショウ(pepper tree)

上記は、いずれもウルシ科に属していますが、ピスタチオ・カシューナッツ・コショウは乾燥種子であり、樹木との接触することは、まずありません。
(ピスタチオ・カシューナッツ・コショウは、国内で商業栽培されていません。)
日本国内で、ウルシ科樹木に直接接触するならば、「山野に自生するウルシ類」または「マンゴー」ということになります。

マンゴー

マンゴーは、接触性皮膚炎が有名です。
特に果皮に含まれる樹脂成分が、過敏症状を起こしてきます。

ビスタチオ・カシューナッツ

ビスタチオ、カシューナッツは乾燥して製品化されています。
種子が利用され、果皮・果肉は食用に供しません。
アレルギー有症者は、マンゴウほど多くありませんが、アレルゲンとしては重要な食材です。
いずれも、特異的IgE検査キットが用意されています。

コショー

コショウは、乾燥して粉末処理されるため、樹脂成分はほとんど含まれません。
局所過敏反応(粘膜刺激症状:くしゃみ・眼痛)はありますが、アレルギーの原因にはなりにくい食品です。

注1

注意:揮発性塗料ラッカーは”Lacquer”です。Laccolとは異なります。

2025.06.20 広瀬 久人