接触性皮膚炎・桃
バラ科・モモ(peach)
病態:物理的微小外傷
原因:果皮毛
桃の果皮で、皮膚炎を経験した人は多いのではないのでしょうか。
果皮の表面にはクチクラ層が変形した果皮棘毛(針状小突起)が密生しています。
このトゲには、長いトゲと短いトゲの2種類があります。
短いトゲは、50~100μで、クチクラ層表面に、絨毯のように密生しています。
長いトゲは、500μで、「海底のチンアナゴ」のように、まばらに生えています。
皮膚炎を起こすのは、500μの長いトゲです。
このトゲは、角皮が厚い手掌では、真皮まで達しません。(手のひらはかぶれない)
顔のような薄い皮膚では、すぐに真皮まで刺入してしまい、強い疼痛・掻痒の原因となります。
モモを触った手も、棘毛が付着していることが多いので、そのまま顔を触れてしまうと、皮膚炎をおこします。
この皮膚炎は物理的微小外傷です。
モモアレルギーの有無に関係なく、だれでも脆弱な皮膚に起こします。
「桃果汁が起こすアレルギー性炎症」とは、区別して考えなければなりません。
(モモアレルギー者は「桃果汁皮膚炎」を生じますが、「果皮棘毛皮膚炎」とは異なります。)
果皮棘毛は、ティッシュや手で擦ってしまうと、折れて増えるので、炎症を広げてしまいます。
速やかに中性石鹸と流水で、発痛部位を洗浄してください。
果皮棘毛は、石鹸の泡に包まれると、皮膚に刺さりにくくなります。
炎症を広げないように、上手に石鹸を使って洗い流してください。
桃の保管方法ですが、自宅では果皮棘毛が飛び散らないように保存して、食べる直前に果皮毛を洗い流してください。
桃の表面を流水中で擦り、撥水層(水をはじく含気層)をこそぎ落とせば、果皮棘毛はほとんどなくなります。
ただし、表面を擦った桃は傷みやすいので、すぐにお召し上がりください。
付記:「桃を皮ごと食べる・食べない」という話題があります。
果皮棘毛は、「粘液に覆われた粘膜」にはほとんど刺さりません。
桃を皮ごと食べても、口腔や消化管は比較的安全です。
2025.06.20 広瀬 久人