摂食性皮膚炎/花木・トウダイグサ科
トウダイグサ科(Euphorbias)
病態:化学性皮膚炎(薬物侵襲性熱傷)
原因:ホルボールエステル類
トウダイグサ科は、サップ(樹液)に触れると、かぶれます。
サップに含まれる有害成分が、化学熱傷・接触性皮膚炎を起こします。
茎の断面から、多量のサップが染み出してくるので、不用意に触らないように注意が必要です。
サップが染み出すのは、切り口だけではありません。葉や花からも染み出してくることもあります。特に花は傷つきやすく、風邪などで草体が揺れてしまうと、花や花茎に小さな傷がついて、微量なサップをまとっていることがあります。
さらさらとしたサップは、あまり粘り気が無いので、意識することなく、しばらくしてから火傷のような皮膚炎を起こしてきます。
サップの炎症は、脆弱な皮膚ほど強くなります。眼瞼や口唇粘膜・結膜は、サップに汚染された手で間接的に触っただけでも重度の皮膚炎を起こします。
私たちは、無意識のうちに顔面や髪の毛を触っていますので、気付いた時には顔全体が赤くただれて、流涙・鼻汁が止まらないという困難な状況に陥ることもあります。
炎症物質の化学的性状
サップに含まれる過敏成分は、ホルボールエステル(Phorbol ester)類です。
ホルボールは、5基・7基・6基・3基のカルボン環が4連となり、四環式ジテルペノイドを形成します。
草種によって、エステル誘導体とその側鎖にバリエーションがあります。
エステル誘導体のバリエーションが、侵襲性のバリエーションに関連しています。
強い侵襲性を持つ誘導体ほど、皮膚炎は重症になります。
さらに、「ハズ」に含まれるホルボールエステルは、発癌性が確認されています。
園芸品種として改良された株は、侵襲性が改善されていますが、やはり皮膚炎を認めますので、注意が必要です。
トウダイグサ科・ハツユキソウ(Snow-on-the-Mountain)
ハツユキソウは、緑地に白いストライブが入る葉が輪生するため、観葉植物として利用されることがあります。
ただし、ブーケ・花束をつくると皮膚炎を起こしてきますので、絶対に切花利用は控えてください。
花は観賞価値が低いのですが、花弁や子葉は傷つきやすく(サップ・樹液が染み出しやすいので)、花の咲いている時期は皮膚炎リスクが高まります。
トウダイグサ科・ポインセチア(Poinsettia)
ポインセチアは、冬のいろどりに欠かせない植物で、クリスマスシーズンの鉢植としてよく知られています。
ポインセチアは、暖かい時期に挿木をすると容易に発根します。
養苗農家は、挿木を利用してポインセチアを育苗していますが、サップによる皮膚炎は有名で、きちんと防御対策を行っています。
一般家庭では、剪定時にサップに被爆しますので、手袋などで防御してください。
トウダイグサ科・キャッサバ(Cassava)
タピオカで有名になったキャッサバも、トウダイグサ科です。
キャッサバには、2種類の有害成分があります。
茎や葉に含まれるホルボールエステル類と、根塊(芋)に含まれるシアン化化合物です。
この章では、ホルボールエステル類に関して説明いたします。
トウダイグサ科であるキャッサバは、茎や葉ににホルボールエステル誘導体を含んでいます。
芋を収穫した後の茎を、適当な長さに切断して、挿木で増やすことができます。
日本でも、キャッサバを育てることは可能で、実際に趣味で栽培しているケースもあるようです。
芋の収穫時や挿木など、茎をカットするときは、サップかぶれにご注意ください。
2020.05.24 広瀬 久人
copyright FutabaClinic All Rights Reserved