麻痺性貝毒
原因
早春から夏にかけて、麻痺性貝毒と呼ばれる食中毒が増加します。
原因となる化学物資は、サキシトキシン及びその同族体（サキシトキシン群）です。
サキシトキシン群は、一部のプランクトンが産生します。
ご注意：下痢性貝毒に関しては、こちらをご参照ください。
麻痺性貝毒：サキシトキシン群
サキシトキシン群を産生する有毒プランクトンが特定海域で増殖すると、捕食者である貝類や甲殻類が汚染されます。貝類では、内臓（主に中腸腺）にサキシトキシン群が濃縮されるため（生物学的濃縮）、内臓を除去せず調理するメニュー（アサリバターなど）が危険です。
貝毒が確認された海域では、すべての貝類が汚染されている可能性があり、海産物の出荷が停止されます。
入江のような形状の湾で、流れのゆるやかな比較的狭い海岸では、強い日差しなど環境条件により有毒プランクトンが一定濃度以上に発生します。有毒プランクトンは、低濃度であっても貝類の汚染は進行します。一時的であっても、貝毒を含むプランクトンの集簇が起こった海域では、ハイリスクとなります。
サキシトキシン群は、加熱に耐性があり、充分に火を通しても、毒性は変わりありません。わさびなどの調味料による解毒もありません。（わさびを付けても、毒性は維持されます）
症状
食後３０分程度で、しゃべりにくい（発語障害）、口周囲のしびれる感じ（知覚異常）を認めます。放置すると、１時間程度でしびれ感・麻痺が全身に拡大していきます。
貝を食べ始めて、しゃべりにくさ・口のしびれを感じたときは、ためらわずに救急車を要請してください。
管理された（検査を受けた）海岸では、貝毒の可能性はほとんどありません。漁協などが管理している潮干狩りは、問題ありません。
管理されていない海岸で、貝類を採取した場合、リスクが否定できません。アウトドア体験など、自然界から取り込んだ食材を利用する場合は、充分ご注意ください。
参考／厚生労働省・自然毒のリスクプロファイル：二枚貝：麻痺性貝毒
https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/animal_det_09.html
2020.03.21 広瀬久人