トップ コラム 健診・検査 予防接種 自費処方

ふたばクリニック HomePage > コラム 
> 一連接種時の ワクチンメーカーの変更

一連接種時の ワクチンメーカーの変更 

ワクチンには、1回接種で終了する予防接種と、3回~4回接種する製剤があります。

複数にわたる一連の予防接種で、ワクチンメーカーが異なる場合は、不安を感じるかもしれません。結論から言いますと、ワクチンメーカーが異なっていても、予防接種として問題はありません。ワクチンシリーズ中のメーカー変更に関して、コラムを設けました。

ワクチンの免疫誘導能は、抗原力価にある

 ワクチンには、病原体由来の物質が抗原として利用されています。この抗原に対して、免疫抗体が誘導されて、感染免疫が成立します。
 この免疫抗体を誘導する能力を、抗原力価として 各ワクチン製剤は検定されています。
 ワクチンメーカーが異なっていても、病原体に対する抗体力価は充分担保されており、他社のワクチン製剤に移行しても、免疫誘導能に不利はありません。

Red Book(米国小児科学会)

 米国小児科学会では、Red Bookを定期的に更新しています。このRed Bookによりますと、一連のワクチン接種のなかで、異なるメーカーのワクチンを使用してよいと記載されているものは、下記の通りです。(2010.8月時点)

ほとんどのワクチンは、互換性があります

 実際には、多くのワクチンが 複数回接種されますが、他社メーカーであっても、予防接種効果に支障はなく、副反応の発生率にも変化は認めません。
 小児インフルエンザワクチンで、1回目と2回目のメーカーが異なる場合であっても問題ありません。DPT-IPVも、同じように異なるメーカーであっても、支障ありません。
 また、麻疹・風疹/混合ワクチンのように、接種間隔が4年以上に及ぶ場合でも、ワクチンメーカーを統一する必要はありません。製薬会社に拘(こだわ)るよりも、一連のプランにおける 接種時期を優先するように心がけてください。

ワクチンメーカーの変更が 問題になる場合

 ワクチンメーカーの変更が問題になる例を以下に提示いたします。ご参照ください。

子宮頚癌ワクチンに関して

子宮頚癌の原因として、HPV(ヒトパピローマウイルス)が重要です。子宮頚癌ワクチンは、サーバリックス と ガーダシル の2種類があります。
サーバリックスは HPV-16,18をターゲットとします。
ガーダシルは HPV-16,18 以外に、コンジローマウイルス/HPV-6,11をターゲットとします。
標的HPVは、サーバリックスが2種ですが、ガーダシルは4種であり、異なるメーカーを使用した場合、コンジローマウイルスに対して免疫が脆弱である可能性があり、注意が必要です。
日本国内では、サーバリックスとガーダシルの混合使用は認められておりません。

小児用肺炎球菌ワクチンに関して

2010年段階では、国内で販売承認されている小児用肺炎球菌ワクチンは、7価PCV(プレベナー7)のみです。
7価とは7種類という意味で、肺炎球菌の7種類の兄弟株(抗原群)をターゲットとしています。
現在海外で普及している 10価 または 13価のワクチンが、今後 国内承認・販売されるかもしれません。価数の多いワクチンへのシフトは可能ですが、注意が必要です。
また、7価製剤(プレベナー7)の接種対象年齢に、世界標準(4歳以下)と国内承認(9歳以下)のずれがあります。健康上の問題とは異なりますが、対象年齢にも注意する必要があります。

(注意:現時点で 10価、13価肺炎球菌ワクチンは、国内未承認です。 2010.08.06)

A型肝炎ワクチンに関して

日本で承認されている唯一のA型肝炎ワクチン・エイムゲン(Aimmugen)は、合計3回接種を予定します。
海外でスタンダードになっているアジュバンド製剤HAVRIX、VAQTA、AVAXIM、EXPALは、1~2回接種を予定します。
エイムゲンと海外製剤は、タイプの異なるワクチンです。
日本国内で、エイムゲンを接種したのち、海外で追加接種を予定する場合、A型肝炎ワクチンに対応してもらえない場合もあります。ご注意ください。

日本脳炎ワクチンに関して

日本国内で承認販売されている日本脳炎ワクチン同士は、互換性があります。一連の接種において、製造元の変更は問題ありません。

日本脳炎ワクチンは、国外でも複数の製剤が製造されています。
国内と国外の日本脳炎ワクチンの接種プランは異なります。
海外での日本脳炎ワクチン接種は、国内製剤との互換性が保たれません。
個々のケースに関しては、担当される先生にご相談ください。

破傷風を含むワクチン(破傷風トキソイド・DT・DPT)に関して

日本では、破傷風単抗原トキソイドが使用されていますが、海外ではジフテリアや百日咳との混合ワクチンが、積極的に利用される場合もあります。
渡航先にもよりますが、日本国産破傷風トキソイドに対する認識が相手国側で不足している場合、追加接種時にトラブルが生じる可能性があります。
事前にトラブルを避けるためには、破傷風トキソイドを含むグローバルスタンダードなワクチン(Boostrixなど)を選択することも、トラブル回避の一手段です。

ふたばクリニック 広瀬久人 (2010.08.06)