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HTLV1ウイルスの母乳感染

HTLV1ウイルスは、”T細胞”という白血球を好んで感染するヒトレトロウイルスです。ATL(成人型T-cell白血病)やHAM(HTLV1性脊髄症/熱帯性痙性対麻痺)の原因ウイルスとして有名です。
日本では、地域的に南方系に多く分布しており、沖縄や九州地方でHTLV1ウイルス保持者が多い傾向があります。
HTLV1に感染すると、T細胞系の免疫機能を阻害するため、日和見感染を起こしやすくなります。たとえば、糞線虫のような寄生虫感染症は、健康成人にとって病原性は乏しいのですが、HTLV1感染者は重症化しやすくなります。
HTLV1抗体陽性の場合、専門医療機関による経過観察が必要となります。日和見感染症対策に加えて、将来的な合併症(ALT,HAM)の回避のため、経過観察が重要です。

HTLV1抗体陽性の意味

HTLV1に感染した場合、HTLV1抗体が陽性になります。

しかし、HTLV1の感染は持続します。

たとえば、麻疹ウイルスに感染すると麻疹抗体が陽性になり、麻疹感染症から私たちの体を保護してくれます。通常のウイルス感染では、抗体産生が 感染免疫の成立を意味します。
しかし、HTLV1抗体が陽性になったということは、感染の成立を確認できるだけで、HTLV1への免疫を認めません。HTLV1はいったん感染すると、ウイルス粒子はT細胞の核内に移行します。抗体による免疫システムでは、核内に移行したウイルス遺伝子(レトロウイルス)を排除できません。HTLV1抗体が陽性になっても、感染者は一生を通じてHTLV1と共棲することになります。

HTLV感染は、母乳による垂直感染が重要

HTLV1は、濃厚な対人接触によって感染します。濃厚かつ持続的に、感染源に暴露した場合感染が成立します。性行為による夫婦間感染(夫から妻への感染)も少ないながら認めますが、スキンを使用するなどの方法で回避することが可能です。一番問題になるのは、母乳感染です。
母親がHTLV1抗体陽性の場合、母乳には、感染したT細胞が含まれております。感染した母乳を摂乳することにより、乳児がHTLV1に暴露され続けることになります。
授乳により、母親から乳児に感染する確立は、10-30%と報告されています。感染母乳で育てられた乳児が、全例感染するわけではありません。しかし、授乳を回避することで、お子様のHTLV1感染を、未然に予防することは可能です。万が一、お子様がHTLV1に感染してしまうと、一生涯リスクを抱くことになります。もし、お母様がHTLV1感染者である場合は、専門医療機関による育児指導を受けてください。
九州・沖縄地方では、HTLV1に関する認識が高いため、授乳時にきちんと対策を講じてきました。感染者確認数は、九州・沖縄において、最近は減少傾向にあります。しかし、同ウイルスは全国的には知名度が低いため、他の地域では増加傾向が認められ、国内総数は明らかに増加しています。九州・沖縄地方と縁のあるお母様で、家族内に免疫不全者の認められる場合は、怖がらずにHTLV1に関する検査をお勧めいたします。

【ご注意】 HTLV1 と HIV は、異なるウイルスです

HTLV3という名前のウイルスもあります。HTLV3とは AIDSウイルスのことです。AIDSもATLも 1980年代に研究が進みました。当初は、ATLウイルスを HTLV1とし、AIDSウイルスを HTLV3と呼んだ時期もありました。しかし、混同をさけるためAIDSウイルス名は HIVと統一されました。 
ATLやHAMは、HTLV1で起こるウイルス感染症であり、AIDSとは異なる疾患です。混同しないように、注意してください。

ふたばクリニック 広瀬久人 (2009.06.29)