増えている百日咳
百日咳は、子供の病気と考えられていました。最近、成人発症例が報告されています。実は、百日咳が 先進諸国で増加傾向にあります。例えば、下記をご覧ください。CDC(米国)の統計ですが、明らかに百日咳は、突出して近年増加しています。
百日咳菌は、抗生物質に弱い細菌です。化学療法を行えば、速やかに除菌可能です。しかし、百日咳の罹患後は、長期に咳嗽が続きます。病原体が消失して、さらに数ヶ月間せきが持続しますが、咳嗽が長期に及ぶ病因はよく判っておりません。
長期の咳嗽の起炎菌として、いままではマイコプラズマや結核菌が重要でした。しかし、最近の感染症動向を考えると、今後は百日咳感染も充分な注意が必要です。
百日咳のワクチン接種期間は、幼児に限定
百日咳の予防接種は、三種混合ワクチン(DPT:ジフテリア、百日咳、破傷風)ワクチンに含まれています。0~2歳(行政的には0歳~7歳5ヶ月まで)に接種する「DPT三種混合ワクチン(追加)」が、百日咳の最終接種となります。第1期追加が最後の接種ですから、幼児期以後に接種機会はありません。
小学校高学年で予定する二種混合ワクチン(DT:ジフテリア、破傷風)には、百日咳ワクチンは含まれておりません。
DPTを接種していない世代
1968(S43)年、ジフテリア・百日咳・破傷風の三種類の不活化ワクチンを混合した形で、DPT三種混合ワクチンの使用が開始されました。当時のDPTには、全菌体百日咳ワクチンが使用されています。全菌体百日咳ワクチンとは、不活化処理(殺菌)した百日咳菌を、菌体ごと使用したワクチンです。
残念ながら、この全菌体百日咳菌ワクチンによる中枢神経系の副作用(脳症、痙攣など)が発生してしまいました。副作用に対する評価・対応のため、1975(S50)年2月~4月まで、百日咳ワクチンを含む予防接種は、一時中止されています。この3ヶ月間の接種中止の後、DPT三種混合ワクチンは再開されましたが、以後接種率は低下します。
1981年(S56)に、百日咳菌抗原の一部を利用する改良型(非細胞性)百日咳ワクチンが開始されるまで、国内のDPT接種率は低下いたしました。昭和40年代後半から50年代前半の世代では、DPTワクチンの規定数(合計4回)が接種完了していない人が多いと思われます。
ふたばクリニック 広瀬久人 (2007.07.07)