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コラム

ワクチンの有効率 とは?

インフルエンザ予防接種の小児有効率は、30%台と報告されています。
それでは、”有効率”とは、何でしょうか?
”有効率”を”有効性の根拠”としてよいのでしょうか?

今回は”ワクチンの有効率”に関して解説します。

【注意】”ワクチン製剤”と”通常薬剤”の有効率は、概念が異なります。今回のテーマは、”ワクチンに関する有効率”です。

有効率の計算

記述疫学では下記4つが基本データとなります。

 (a)ワクチンを接種した人で、発病しなかった割合(接種群非罹患率)
 (b)ワクチンを接種した人で、発病した割合(接種群罹患率)
 (c)ワクチンを非接種で、発病しなかった割合(非接種群非罹患率)
 (d)ワクチンを非接種で、発病した割合(非接種群罹患率)

予防接種の有効率を (a)接種群非罹患率と 誤解する傾向があります。

特に、ネット上の記事で、”有効率” を (a) と摩り替えた強引な理論展開(?)も認められますが、本来 有効率は下記のように計算いたします。

有効率=(1-b:接種群罹患率/d:非接種群罹患率)×100 (単位:%)
発病の抑止を線形に等級化した、0から100までの値です。100点満点で採点したものと考えてください。

有効率と有効性の違い

たとえば、ポリオ生ワクチンを例に考えてみましょう。現在、日本国内でポリオ(野生株)感染症は認めません。同ワクチンの接種率は極めて高く、接種数は正確に把握可能です。
それでは、本邦におけるポリオワクチンの有効率を計算できるのでしょうか?
接種群も非接種群も、罹患率は0% です。
ポリオワクチンの場合、有効率は計算できませんし、本邦における疫学調査は あまり意味がありません。

ポリオワクチンの”有効率”は計算不能ですが、同ワクチンは極めて有効な予防接種です。それでは、有効率の計算は、有効性の検証に役に立つのでしょうか?有効率がどのくらいの数値であれば、有効と判断するのでしょうか?

実は、有効率は、仮説の設定要因ですが、仮説を検証できません。
仮定のお話として、問題提起しやすいのですが、真実かどうかを検証するためには、別の手法を必要とします。
有効率の数字のみで、”○○%以上が有効”と、言い切ることはできません。

非常に判りにくい話で 申し訳ないのですが、ワクチンの”有効率が100%”であっても、あくまで魅力をアピールしただけで、有効性は検証できていません。パーセントで表示される数字が、有効・無効のどちら側に傾くとしても、あくまで有効率という”お手軽な手法”を利用した計算結果(可能性)を示しただけなのです。

検証の不在に気づかず、仮説を信仰して、肯定派・否定派双方が、水掛け論を行っている場合があります。
”有効率30%は、有効か無効かという”マトを外した議論は、堂々巡りにおちいります。
直感的に理解しやすい”有効率”が独り歩きしがちですが、有効率のみで有効性を検証できるものではありません。

抗体陽転率は、有効性の指標?

予防接種の有効性の指標として、”抗体陽転率” があります。ワクチン接種者の抗体陽転率を調べることにより、獲得免疫を評価するものです。麻疹や水痘(みずぼうそう)の場合は、血中抗体価の上昇(陽転)が感染防御の指標となります。
しかし、インフルエンザの場合は事情が違います。インフルエンザワクチン接種によって、血中HA抗体価は、上昇し陽転化します。しかし、毎年変異するHA抗原の中和抗体チェックが、次期(将来)の流行に対する有効かどうかは判断できません。

最後に

小児有効率30%のインフルエンザワクチンを、多くの医療機関が推奨しております。これは、1歳以上の小児にとって、現行インフルエンザHAワクチンは有効性があるとの判断に基づいております。
約¥3000円のワクチン費用に対して、有効率30%が 経済的合理性に見合うものかどうか・・・ 価格の合理性を判断する材料としても、有効率を考えてみる視点もあります。

ふたばクリニック 広瀬 久人 (2005.10.24)