乳幼児期の貧血
小児科領域の栄養性(鉄欠乏性)貧血
一歳になる幼児が、貧血と言われたんですが・・・ お母様が、相談にお見えになりましたが、納得できない様子です。どうも、子供の貧血という病態が、実感できていません。
貧血というと 成人の病気のような印象があります。しかし、成長期にある小児にとって、成長に必要な鉄分が不足すれば、貧血は起こります。逆に、生長期だからこそ、鉄の需要をまかなえないことがあります。この乳幼児期に特徴的な栄養性貧血(鉄欠乏性貧血)を、簡単に説明したいと思います。
以下では、検査値や数値を使用しますので、かなり 理屈っぽい説明となっております。
私たちの血液量は?
全身を流れている血液の総量を、循環血液量と呼びますが、体重の 5% です。体重10Kgの幼児ですと、循環血液量は約500mlと計算できます。
ヘモグロビンに含まれる鉄量は?
人のヘモグロビン分子量は 64,500です。
ヘモグロビン1分子に、鉄原子(分子量55.8)は4つ付いていますので、ヘモグロビンに含まれる鉄の重量%は、下記のようになります。
鉄重量% = 55.8×4/64,500 × 100 = 0.346%
血液100mlに含まれる鉄量は?
ヘモグロビンの基準値は11~17g/dlです。
a: ヘモグロビン値を 12g/dl と仮定します。(やや低めの値に仮定しています)
b: 100mlの血液は、12g のヘモグロビンを含みます。
c: 12gのヘモグロビンには、41.5 mg の鉄が含まれます。
∴ヘモグロビン値 12g/dl の血液100mlには 41.5mgの鉄が含まれます。
幼児の体重が 1Kg 増加した場合、鉄の必要量は?
体重1Kg増加に対して、血液は その5%:50ml増加する必要があります。血液50mlに相当する鉄分は、約20mgとなります。
20mgの鉄を吸収する食事とは?
鉄分を多く含む食品の代表として、レバーを参考に考えてみましょう。鉄含有量は、レバー100gに対して 約4~9mg です。
鉄は非常に吸収の悪い栄養素ですから、食べた食物に含まれる総鉄量の約2割程度の吸収が限度です。20mgの鉄を吸収するために、レバー200~500gの摂食が必要となります。
乳幼児期は、貧血をおこしやすい!
子育ての経験のある方は、実感できると思いますが、体重1Kgといっても あっという間に増えていきます。乳幼児期の体重増加、とくに新生児期の体重増加はスピードが速い特徴があります。体重増加に見合うだけの栄養摂取が無いと、栄養素の欠乏を起こしやすい時期です。
鉄分は吸収されにくいにもかかわらず、体内需要は非常に旺盛ですから、体重増加に対応する血液量の増加に追いつけません。結果として、乳幼児期は貧血を起こしやすい時期と考えられます。
ふたばクリニック 広瀬久人 (2005.08.03)