ふたばクリニック 内科・小児科

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コラム

キャリア蛋白/多糖体ワクチンの工夫

 2008年12月に アクトヒブ(Hibワクチン)が国内販売されました。
 2010年 2月に プレベナー(7価肺炎球菌ワクチン)が国内販売されました。
 アクトヒブ(Hibワクチン)とプレベナー(肺炎球菌ワクチン)は、病原体の莢膜多糖体を抗原する、乳幼児に有効な ”結合型ワクチン” です。
 予防接種の抗原に 莢膜多糖体を利用する場合、多糖体の単体接種は乳幼児に対して免疫誘導効果を認めません。臨牀使用するために、莢膜多糖体をキャリア蛋白に結合することで、乳幼児にも有効なワクチンが開発されました。
 結合型ワクチンの要となるキャリア蛋白に関して、コラムをもうけました。

  • 莢膜多糖体は免疫誘導能が低い 
  • キャリア蛋白に結合させて、莢膜多糖体を乳幼児ワクチンに利用
  • キャリア蛋白の選択
  • 莢膜多糖体を利用した各ワクチン
莢膜多糖体は免疫誘導能が低い

わたしたちの免疫監視システムは、外来から侵入する病原体を常にチェックしています。このシステムが病原体として認識しやすい・・・抗原として確認しやすい・・・物質があります。例えば”蛋白質”は抗原として認識されやすい物質です。蛋白質のように 分子量が大きく 複雑な構造を持つ物質は、高い抗原性をそなえるため、免疫システムが異物認識しやすい特徴があります。
しかし、分子量が小さかったり、構造が単調な場合は、異物(抗原)認識が困難になります。
莢膜多糖体は、多くの病原体の表面抗原として重要です。けれども、多糖体単独の予防接種では、抗原性が低いために、乳幼児に充分な感染免疫を誘導できません。さらに、多糖体単独の予防接種では、ブースター効果も認められません。乳幼児にとって、多糖体抗原はワクチン製剤として利用しにくい物質です。

キャリア蛋白に結合させて、莢膜多糖体を乳幼児ワクチンに利用

免疫システムの未熟な月齢・年齢では、多糖体抗原に ”ひと工夫” を加える必要があります。そのための ひとつの手段が、”蛋白質への結合” です。
単体では、抗原認識されにくい多糖体ですが、蛋白質に貼り付けると 抗原性が増強されます。ワクチンの抗原性を高めるために利用される蛋白質を、キャリア蛋白と呼びます。
たとえば 海苔で手巻寿司を握るように、キャリアで多糖体を巻いてしまうと、免疫システムが対応しやすい構造に変わります。キャリア蛋白を付加することで、単体では抗原性が弱い多糖体抗原であっても、乳幼児期に免疫能を誘導することが可能となり、ブースター効果も有効になります。

キャリア蛋白の選択

では、どのような蛋白質をキャリアとして選べばよいのでしょうか?
卵やゼラチンの蛋白質は異物性が高く、アレルギーの可能性が否定できません。ウシやブタ由来の蛋白質は、利用をためらいます。
蛋白であれば・・・何でも良いというわけではありません。製剤の安定性・安全性も考慮して、キャリア蛋白は選択されます。
 ActHIBには、キャリアとして破傷風トキソイドが使用されています。
 Prevenarには、キャリアとしてジフテリアトキソイドが使用されています。
破傷風 と ジフテリア・・・というキーワードで思い当たる予防接種があります。この2種類のトキソイドはDPTやDTに使用されている抗原であり、キャリアとしても利用が可能です。(【付記】参照)

【付記】
DPT(DTaP):ジフテリア・百日咳・破傷風三種混合ワクチン
DT:ジフテリア・破傷風二種混合ワクチン

海外では、ActHIBとPrebenarは、DPT(DTaP)と同日に接種されるために、キャリアとしてDPTの成分を利用することは、とても合理的です。

莢膜多糖体を利用したワクチン

1:アクトヒブ 

アクトヒブにキャリアとして利用されている破傷風トキソイドは、破傷風への免疫誘導能は認めません。しかし、キャリアのトキソイドと結合することにより、HIbの莢膜多糖体は免疫誘導能を獲得します。
 同ワクチンは、生後2ヶ月から使用できます。初回接種月齢により、接種回数が異なりますが、初回を2ヶ月で接種開始すると、4回接種が必要となります。

2:肺炎球菌ワクチン

a:プレベナー

プレベナーにキャリアとして利用されているジフテリアトキソイドは、ジフテリアへの免疫誘導能は認めません。しかし、キャリアのトキソイドと結合することにより、肺炎球菌の莢膜多糖体は免疫誘導能を獲得します。
同ワクチンは、生後2ヶ月から使用できます。初回接種月齢により、接種回数が異なりますが、初回を2ヶ月で接種開始すると、4回接種が必要となります。

b:ニューモバックスNP

ニューモバックスはキャリアを使用せず、肺炎球菌莢膜抗原を単体で利用する多糖体ワクチンです。
肺炎球菌・莢膜多糖体ワクチンは、2歳以上を対象として、単回(1回)接種となります。(ただし、5年以上の間隔をあけて、追加接種も認められています。)

3:髄膜炎菌ワクチン

髄膜炎菌ワクチンに関しては、多糖体ワクチンと結合型ワクチンの2種類が開発されています。結合型ワクチンは、生後2ヶ月から使用できます。初回接種月齢により、接種回数が異なりますが、2ヶ月で接種開始すると、合計4回接種が必要となります。
通常、髄膜炎菌ワクチンは就学年齢以後に接種行いますので、臨床上 1回接種となる場合がほとんどです。

Menactra(MCV4/結合型髄膜炎菌ワクチン)は、11歳以上を対象とするため、1回接種が原則です。

4:チフス菌ワクチン

腸チフスワクチンは、多糖体ワクチンと生ワクチンが製造されています。結合型ワクチンは、製造されておりません。

ふたばクリニック 広瀬久人 (2010.02.24)

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